X’mas Stories 一年でいちばん奇跡が起きる日

「もう枕元にサンタは来ないけど、この物語がクリスマスをもっと特別な一日にしてくれる。六人の人気作家が腕を競って描いた六つの奇跡。自分がこの世に誕生した日を意識し続けるOK、イブに何の期待も抱いていない司法浪人生、そして、華やいだ東京の街にタイムスリップしてしまった武士……!大事なあの人への贈り物に、自分へのご褒美に。冬の夜に煌めくクリスマス・アンソロジー。」

引用:朝井リョウ あさのあつこ 伊坂幸太郎 恩田陸 白河三兎 三浦しをん 「X’mas Stories」新潮文庫 裏表紙より

ネタバレありです。ご注意ください。

6人の作家によるクリスマスストーリーを収録した短編小説集です。例にもれず、この短編小説集には私の推し作家である三浦しをんさんと恩田陸さんが参加しており、購入しました。他の作家さんも名前を聞いたことがある方ばかりで、どんな本を書かれるのか読んでみたいと思っていたので、わくわくしながら読みました。

あさのあつこ きみに伝えたくて

泣きました。高校生時代のくすぐったいような初心な時も、大学生になって忙しない日常のなかですれ違ってしまう時も、どんな時も二人にはお互いを好きな気持ちがあって、胸が締め付けられるような気持ちで読みました。短編という限られた文字数の中で、胸がきゅっとなったりぎゅっとなったり、揺さぶられました。あさのあつこさん、初読みでしたが他の作品も読んでみたいです。

恩田陸 柊と太陽

男二人で語り合うシチュエーションだけで、によによしてしまいますね。作品の具体的な設定などはぼんやりとしか分からないまま、でも会話はどんどん核心に迫っているという、この世界観が恩田さんらしいなと思います。よく分からないけど、話に引き込まれて、私も聴衆の一人になっている、というのは恩田さんあるあるのような気がします。

三浦しをん 荒野の果てに

しをんさんの短編は、この本の最後を飾っています。登場人物全員憎めない人たちで、まるっと愛おしい気持ちになります。特に里絵は江戸時代からタイムスリップしてきた二人を呆気らかんと受け入れ、江戸っ子の粋を受け継いでいる気持ちのいい人だと思いました。ストーリー的には色々考えさせられる内容だけど、キャラクターに茶目っ気があって、弥五郎の「卯之助どのも一緒に…」の件とか何気ない会話にくすっとなったりして、この短編集の中でも群を抜いて好きな作品です。

上記のほかに、朝井リョウさんの「逆算」、伊坂幸太郎さんの「一人では無理がある」、白河三兎さんの「子の心、サンタ知らず」が収録されています。「クリスマス」という同じお題ですが、6者6様の内容になっており、とても読みごたえがあります。中でも、恩田さん、しをんさんは「クリスマス」をこういう角度から表現するんだ、とおもしろかったです。発想力が素晴らしいです。

Thanks!
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